個人事業主向け法人成りのメリット/デメリット(とその裏返し)
起業の際、まず検討することとして、個人事業主か法人を選択することになります。もしここで個人事業主を選択したにしても、将来的に法人成りすることも見据えて、法人の特徴についても起業前に知っておくことが望ましいといえます。
そこで、法人成りのメリットとデメリットについて整理してみましょう。
◆メリット
・社会的な信用力の高さ
法人が取引の条件に定められていたり、融資や人材採用の際に有利には働いたりします。また、銀行等の金融機関からの融資や、ベンチャーキャピタル等の投資家から出資を受けやすくなります。
・損金算入が可
役員報酬を支給することができ、一定の条件を満たすことで損金算入が認められます。
・事業承継が容易
オーナーに相続が発生すると、その相続人に事業の資産が承継されますが、法人の場合は引き続き法人名義で事業資産として活用することができます。また、許認可等もそのまま引き継ぐことができます。
◆デメリット(とその裏返し)
・税務申告と顧問税理士
税務申告等で事務的な負担が増加し、法人税の申告や経理等をもれなく行うために顧問税理士に依頼するニーズが増えるでしょう。一方で、顧問税理士は、税務申告や記帳代行だけではなく、会社の戦略を共に考えるビジネスパートナーの存在として心強い存在といえます。また、司法書士や社会保険労務士等、他士業とのネットワークを展開していることが多く、会社が強化したい分野について、顧問税理士のネットワークを活用することも期待できます。
・設立登記と司法書士
法人成りには設立登記を行う必要があり、株式会社の場合、実費だけでも20万円ほどかかります。さらに登記の専門家である司法書士が関与することが一般的であり、総額で30万円前後設立登記の場面でかかることになります。
一方で、司法書士は、商業登記だけではなく、会社法務にも精通しています。設立登記をきっかけに、身近な会社法務相談については司法書士に相談等する関係性を築くことが期待できます。
・社会保険の加入義務と社会保険労務士
社会保険面では、従業員に健康保険や厚生年金保険への加入が義務づけられるため、社会保険の負担が生じます。
一方で、従業員にとっての福利厚生面となるため、人材採用や人材の定着にもつながります。また、社会保険の専門家である社会保険労務士が関与することにより、社会保険だけではなく、就業規則の策定や就業環境の整備等に関するコンサルティングを受ける契機にもなります。
法人化すると、個人事業主の場合と比べて、手続面で行うべき事務作業等が増えますが、一方で税理士をはじめとするネットワーク拡大のチャンスといえます。
税理士、司法書士、社会保険労務士等の士業がワンストップで法人向けサービスを実施しているような士業グループに依頼し、トータルでサポートしてもらうこともぜひご検討ください。
司法書士 本橋 寛樹
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※記事は執筆時点の法令等に基づくため、法令の改正等があった場合、最新情報を反映していない場合がございます。法的手続等を行う際は、各専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。