連邦議会まで動かした、有名ネズミの延命
ミッキーマウス等のディズニーのキャラクターも著作権で保護されていることは、皆様もご存じのとおりです。先回は、「著作者が死亡した後や発表した後、70年」で著作権の保護期間が切れてしまうお話をしました。また、「保護期間中でもその著作権者の相続人がいないとき」は、著作権は消滅します。そうすると、著作者が有していた著作物に対する権利も消滅してしまいます。著作権が消滅した著作物を、「パブリック・ドメイン」と呼びます。誰でも自由に利用できる著作物になるのです。
ところで、ミッキーマウスが産まれた年をご存じでしょうか。ミッキーマウスは、1928年に公開された「蒸気船ウィリー」で現れました。当時のアメリカの著作権法に従うと、「発表から56年後」の1984年に著作権が消滅します。
これでは、ディズニーの象徴であるミッキーマウスに対する著作権が消滅してしまい、濫用される恐れが出てきました。これに困ったディズニーは、ディズニーの象徴でありかつアメリカ合衆国の象徴であるミッキーマウスを保護すべき運動を始めました。その結果、アメリカ連邦議会を動かして「ミッキーマウスの延命」を図ることに成功したのです。
アメリカでは、ミッキーマウスの著作権が消滅しそうになると、何度となく著作権法は改正等を繰り返しています。直近では、1998年にアメリカの著作権法延長法が制定されて、著作権の保護期間が「著者の死亡後70年」となりました。しかも、法人の場合は「発行後95年間」または「制作後120年間」のどちらか短い方とされました。そうすると、ミッキーマウスの場合は、発表年の「1928年」から「95年後」の「2023年」まで保護期間が継続することになります。
もうすぐ「2023年」です。また、ミッキーマウスの保護に連邦議会が動きだすのでしょうね。
ところで、タックスヘイブンという言葉をご存じでしょうか。租税回避地に本社を置くことで、巨額に圧し掛かる税金を逃れることが出来る方法です。例えば、グーグルやアップル等の有名な会社が利用しています。しかしながら、ディズニー社はそんなことはしません。ディズニー社は、膨大な税金をアメリカ連邦に納めているのです。アメリカ国内のディズニーランドの利用料や各種のキャラクターグッズの収益によって、高額な納税が可能になるのです。アメリカの象徴であるミッキーマウスは、アメリカ合衆国という国全体で守られているということが分かります。
先にお話しをしたように、著作権等の知的財産権も相続の対象になります。もし、著作権を有する財産を相続した場合、保護が永遠に続くものではないことを忘れないようにしてください。こんな話を聞いた後は、ドラえもんは大丈夫かな・・・、キャンディキャンディは大丈夫かな・・・、なんて想いを巡らせてみてください。
行政書士 鈴木 克尚
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※記事は執筆時点の法令等に基づくため、法令の改正等があった場合、最新情報を反映していない場合がございます。法的手続等を行う際は、各専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。