生活保護受給者が相続に直面した場合の処方箋

生活保護受給者の相続に直面した場合に

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、生活保護受給世帯は着実に増加の傾向にあります。

最近のメディアでは、生活保護の不正受給が多くと取り沙汰されて社会問題にもなっています。
この反面、本当に生活保護を必要とされる方々の生活が脅かされていることを忘れてはいけません。

今回は、生活保護の受給者が相続に直面をした際に、相続財産を受け取って問題はないのか、それとも相続放棄をすることで生活保護の受給を継続することが出来るのかについてまとめてみました。

生活保護受給者の相続放棄は出来るのでしょうか

この点については、「生活保護受給者の『自由な』相続放棄は認められない」のです。
なぜなら、生活保護の受給要件に「利用できる資産を生活維持のために活用する」ことや、「収入に変動があった場合には届け出る義務」が定められています。
したがって、相続する資産が有るのならば、まず自分の資産で生活費を賄うことが原則と考えられています。
ただし、例外として相続財産を譲り受けても、生活保護の全部または一部がみとめられることがあります。
それでは、この例外場面をみてみましょう。

例外的に相続財産を譲り受けても、生活保護受給できる場合

相続財産が少額の場合

相続する財産が僅かでその資産を活用しただけでは、最低限の生活を維持することができないときには、相続することができます。
たとえば、少額の現預金を相続した場合など、一時的な収入だと認められる程度の財産であれば、生活保護を受給しながら遺産を相続することが可能です。

必要不可欠な不動産は相続できる

不動産は相続すれば生活保護の受給は停止されると思われがちですが、必ずしもそうではありません。
たとえば、最低限度の生活を維持するために住むための自宅であれば相続することができます。
また、事業用として必要不可欠だと判断される田畑などの土地の場合も、相続が認められることがあります。
自宅を相続した場合などには、住宅扶助のみ減額支給され、生活保護の受給は継続できます。
他方で、現在持ち家が有るのに更に家を相続する場合や、資産価値が高くて売買し易い不動産を相続する場合は、基本的に相続して生活保護を継続することは認められません。
なぜなら、現金化が容易な不動産の場合は、その資産を活用することで、最低限の生活を維持することが可能になるので、原則として生活保護の受給は停止されます。

換金が難しい財産は相続が認められることもある

換金が難しい財産の場合も、相続できることがあります。
たとえば、買い手が見つかり難い山林や、取引の流動性が殆どない骨董品などです。
これらの財産は、換金して最低限の生活を維持するために用いることが難しいので、生活保護の受給を続けながら相続できる可能性のある財産だといえるでしょう。

まとめ

相続が発生した場合は、まずは福祉事務所のケースワーカーに相談することが最善策です。
生活保護の受給が停止されるか否かは、ケースバイケースです。あとあと面倒にならないためにも、専門家のアドバイスをもらったうえで、判断しましょう。きっと、最善の方法がみつかるはずです。

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行政書士 鈴木 克尚

行政書士法人F&PartersEAST 行政書士(出入国関係申請取次業務特定社員)、東京都行政書士会登録、登録番号:第11082416号

※記事は執筆時点の法令等に基づくため、法令の改正等があった場合、最新情報を反映していない場合がございます。法的手続等を行う際は、各専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。