治療と仕事の両立支援を可能にする職場環境づくりとは?

人口の減少により働き手がいなくなる中、老後の収入に対する不安や「年金と貯金で生活はできるが、健康維持のために働きたい」という意欲のある人が増え、現役引退までの年齢は伸びる傾向にあります。

長く働き続ける中で、従業員のライフスタイルが変わったり、病気になることも不思議ではありません。リスクマネジメントの観点から見た時、病気になった従業員に対し、会社は現在進行形の問題に対してのみ対応を考え、出処進退を含めた将来的な問題は従業員の判断に任せる、という方針で良いのでしょうか。

健康であれ病気であれ、少しでも長く働いてもらいたいと会社が考えた時、会社は何を行い、何を行わないか。それを考えるきっかけになりそうな助成金が、今回ご紹介する「治療と仕事の両立支援助成金(環境整備コース)」です。

(1)「治療と仕事の両立支援助成金(環境整備コース)」の概要

「治療と仕事の両立支援助成金(環境整備コース)」は、がん・脳卒中・心疾患・糖尿病・難病など、継続して治療が必要な傷病を抱えた労働者が離職することなく働けるよう、両立支援制度を検討・導入することを支援する助成金です。
企業または個人事業主に対し、1回限り20万円が助成されます。

申請に先立ち、会社で行う手続きは、
① 直接雇用する労働者1名に対し、業務として「両立支援コーディネーター基礎研修」を受講させる
② 治療と就労を両立させるための両立支援制度を策定し、就業規則または労働協約に規定する
③ ①の労働者を、受講完了後に両立支援コーディネーターとして配置する
④ 両立支援制度の導入と両立支援コーディネーターの配置について、労働者に周知する
というものです。

これらの手続きを、令和3年(2021年)4月1日から来年3月31日までの間にすべて行った後、支給申請書類一式を独立行政法人労働者健康安全機構(神奈川県川崎市)へ提出します。他の助成金と違い、申請先は都道府県労働局ではありませんので、ご注意ください。

また、申請期間は令和4年(2022年)6月30日ですが、予算の都合上、申請が多い場合は前倒しで終了となる可能性があります。

(2)導入可能な両立支援制度の策定

①「基礎研修の受講」と②「両立支援制度の策定」はどちらが先でも構いませんが、会社にとってより重要度が高いのは②です。

具体的な両立支援制度としては、
・時間単位の有給休暇
・病気休暇
・フレックスタイム制度
・時差出勤制度
・短時間勤務制度
・テレワーク制度
などが考えられます。

費用負担が発生するものもありますので、絵に描いた餅にならないよう、実際に運用可能な制度を選択した上で、利用条件を明確にしておくことが大切です。制度を活用してもらうためにも、その内容を就業規則に明文化し、書面の回覧・社内での文書掲示・イントラネットなどを利用して従業員に周知することが望ましいです。「就業規則への記載」と「労働者への周知」は、両立支援助成金の支給要件のひとつでもあります。

また、両立支援制度の先行するモデルケースとして、「育児と仕事の両立」があり、そちらに似た制度として、費用負担が少ない「時間単位の有給休暇」「無給の病気休暇」「時差出勤制度」「短時間勤務制度」あたりが、導入にあたってハードルが低いと考えられます。

では、実際に従業員が会社へ「治療と仕事の両立」に対して支援を申し出た場合、会社の立場から支援制度を検討し、運用するには具体的に何をすればいいのでしょうか?次回コラムで詳しくお伝えします。

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社会保険労務士 谷口 真起子

社会保険労務士法人F&Partners所属、社会保険労務士、京都府社会保険労務士会、登録番号:京都26190003号

※記事は執筆時点の法令等に基づくため、法令の改正等があった場合、最新情報を反映していない場合がございます。法的手続等を行う際は、各専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。