治療と仕事の両立支援助成金について解説!

人口の減少により働き手がいなくなる中、老後の収入に対する不安や「年金と貯金で生活はできるが、健康維持のために働きたい」という意欲のある人が増え、現役引退までの年齢は伸びる傾向にあります。長く働き続ける中で、従業員のライフスタイルが変わったり、病気になることも不思議ではありません。

リスクマネジメントの観点から見た時、病気になった従業員に対し、会社は現在進行形の問題に対してのみ対応を考え、出処進退を含めた将来的な問題は従業員の判断に任せる、という方針で良いのでしょうか。

健康であれ病気であれ、少しでも長く働いてもらいたいと会社が考えた時、会社は何を行い、何を行わないか。それを考えるきっかけになりそうな助成金が、今回ご紹介する「治療と仕事の両立支援助成金(環境整備コース)」です。

今回は連載2回目。実際に従業員が会社へ「治療と仕事の両立」に対して支援を申し出た場合、会社の立場から支援制度を検討し、運用するには具体的に何をすればいいのか?について、また令和2年度からの手続き上の変更点についてお伝えします。

(3)両立支援コーディネーター候補者の選定と基礎研修の受講

実際に従業員が会社へ「治療と仕事の両立」に対して支援を申し出た場合、医療機関や従業員ではなく、会社の立場から支援制度を検討し、運用する人物が必要になります。「両立支援コーディネーター基礎研修」は、そのために必要な知識を短期集中的に学ぶための研修です。
自社の労働者のうち、主に人事労務担当者から「両立支援コーディネーター」候補者を選び、本人の同意の上、業務時間内に「両立支援コーディネーター基礎研修」を受講してもらいます。

研修はインターネットとパソコンを利用した動画配信方式で行われ、
① 指定された一定期間(2週間)内に、随時受講する「動画配信研修」
② 指定された日時にリアルタイムで受講する「WEBライブ講習」
の2つがあり、指定された期間内に、すべての内容を受講完了する必要があります。

以前は貸会議室などを利用して1日がかりで行われていましたが、令和2年度からオンラインに移行しました。同時にテキストや教材の見直しこそ行われましたが、研修の基本内容や合計の受講時間自体はほとんど変わりません。

オンライン移行により1回あたりの受講定員も数倍に増え、「業務のスケジュールに合った日程に申し込み、業務の合間に少しずつ受講する」という方法が可能になりました。以前は「近くで開催される回に日程が合わない」「受付開始直後に定員になり、申し込みすらできなかった」(数十名の定員に対し500名程度の応募があったそうですので、抽選方式でも狭き門だったようです)などの問題がありましたが、場所・時間・定員の問題はほぼ解消されました。時間とお金をかけて会場へ移動する必要もなくなり、会社で制服を着て受講する人、自宅で在宅勤務中に受講する人、出張先のホテルで受講する人など、受講する場所も多様化しています。

受講完了後、会社は受講者を「両立支援コーディネーター」として選任し、両立支援業務に従事させることができるようになります。
研修自体は経営者や役員の方でも受講できますし、従業員に少しでも長く働いてほしいと考えておられる方には強く受講をお勧めしたい内容ではありますが、この場合は両立支援助成金の対象にはなりません。

(4)令和3年以降の変更点

前述の通り、「両立支援コーディネーター基礎研修」が令和2年からオンライン開催に移行しましたが、令和3年にはもう一つ大きな変更が行われています。それは、「両立支援助成金」そのものの申請手続きが簡素化されたことです。
令和2年度までは事前に計画書を作成し、認定を受けるという手続きが必要でした。しかし令和3年度は不要となりました。申請手続きを令和2年以前と比較してみましょう。

<令和2年度以前>
① 「両立支援環境整備計画書」を作成する
② 「両立支援環境整備計画書」を労働者健康安全機構へ提出し、認定を受ける
③ 両立支援コーディネーターとして配置する労働者を選び、「両立支援コーディネーター基礎研修」を申し込む
④ 両立支援コーディネーターとして配置する労働者に対し、「両立支援コーディネーター基礎研修」を受講させる
⑤ 就業規則または労働協約を変更し、両立支援制度について規定する
⑥ 両立支援制度の導入と両立支援コーディネーターの配置について、労働者に周知する
⑦ 計画書の内容に変更が生じた場合は、その都度変更内容を届け出て認定を受ける

<令和3年度以前> ※事前認定がないため、当初の計画から変更が生じても届出は不要。
① 両立支援コーディネーターとして配置する労働者を選び、「両立支援コーディネーター基礎研修」を申し込む
② 両立支援コーディネーターとして配置する労働者に対し、「両立支援コーディネーター基礎研修」を受講させる
③ 就業規則または労働協約を変更し、両立支援制度について規定する
④ 両立支援制度の導入と両立支援コーディネーターの配置について、労働者に周知する

今まではせっかく計画を立てても抽選に漏れて基礎研修が受講できなかったり、両立支援制度を見直すことになったりと、途中で変更が入るたびに書類を作成して提出する必要がありました。手続きが簡素化されたことで、助成金申請はもとより、社内での制度運用にあたっても、大幅な負担軽減が期待できます。

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社会保険労務士 谷口 真起子

社会保険労務士法人F&Partners所属、社会保険労務士、京都府社会保険労務士会、登録番号:京都26190003号

※記事は執筆時点の法令等に基づくため、法令の改正等があった場合、最新情報を反映していない場合がございます。法的手続等を行う際は、各専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。