退職後の健康保険
退職後、あるいは勤務形態の変更により勤務先の加入資格を喪失した場合、その後の健康保険には「家族の扶養」「任意継続」「国民健康保険」という3つの方法があります。
(1) 家族の扶養に入る
続柄・年齢・収入・同一世帯か別世帯かなど、細かい条件がありますが、家族が加入している健康保険で扶養に入ることができれば、一番負担が少なくて済みます。健康保険ごとに条件が変わりますので、家族の方から総務担当者へ相談して頂くのが確実な方法です。
また、収入には所得税非課税のものを含みます。退職直後は無収入でも、雇用保険から基本手当(いわゆる失業保険のこと)をもらうようになると、もらい終わるまで収入要件を満たさなくなり、いったん健康保険の扶養から抜け、国民健康保険へ加入しなければなりません。
収入要件は「年収130万円」という言葉がひとり歩きしがちですが、実際は「その日の収入額」により判断されます。協会けんぽの場合、59歳以下は1日3,612円以上、60歳以上は1日5,000円以上で収入要件を満たさなくなります。
扶養から抜ける手続きは忘れがちですので、ご家族を扶養に入れられる方はご注意ください。
(2) 任意継続
協会けんぽの場合、継続して2か月以上健康保険に加入していれば、「任意継続被保険者」として継続して協会けんぽに加入することができます。期間は最大2年間。
在職時に会社が負担していた保険料も本人負担となるため、保険料は2倍になります。
保険料を計算する基準となる標準報酬月額が上限30万円(執筆時時点)となっており、保険料はこれ以上高くなることはありません。
例えば京都府在住の60歳の方であれば、保険料の上限は、
標準報酬月額30万円×(京都府の健康保険料率10.06%+全国一律の介護保険料1.8%)=35,580円
となります。
また、条件を満たせば家族も継続して扶養に入れることができ、保険料も変わりません。
任意継続を希望する場合、退職翌日から20日以内に、住んでいる都道府県の協会けんぽ支部へ書類を提出します。必要な書類は協会けんぽ窓口やホームページで配布されています。
また、初回は指定された日、2回目以降は毎月10日までに保険料を納付しなければなりません。コンビニや金融機関で支払うこともできますが、前納制度(割引あり)や口座振替も可能です。
(3) 国民健康保険に入る
(1)や(2)に該当しない場合、国民健康保険に加入することになります。
保険料は前年の所得をもとに計算されますが、計算方法は住んでいる自治体により異なります。
さらに扶養の概念がないため、人数が増えると保険料も増える仕組みになっています。
会社都合退職や前年の所得が少ないなどのケースを除き、保険料は任意継続より高くなることがほとんどです。
社会保険労務士 谷口 真起子
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