【相続工学研究会コラムPART1】空き家ってなんだ?

2023年3月13日、みんなの相続窓口全国協議会の主宰により、相続工学研究会の第2回カンファレンスが京都で開催されました。

カンファレンス内で議論された内容を、今回から全4回にわたり、それぞれ違うテーマでお届けいたします。

第1回目は、「空き家ってなんだ?」と題し、空き家について議論を行います。

【ファシリテーター】
株式会社ルリアン専務取締役 小西 弘樹

【パネリスト】
株式会社ルリアン代表取締役社長 みんなの相続窓口全国協議会会長 藤巻 米隆
F&Partnersグループ代表 仁井 勝之
筑波大学システム情報系教授 大澤 義明
同志社大学商学部商学研究科教授 内藤 徹


小西
小西

まず、一つ目のテーマですが、「空き家ってなんだ?」という話をしていきます。空き家については考察するべきことがたくさんりますので、まずは藤巻会長から説明をお願いします。

藤巻会長
藤巻会長

居住という視点で見ると「住んでいる」か「住んでいない」か、ということがあると思うんですね。住んでいる場合は当然、空き家ではないですし、住んでいない場合が空き家というふうに言えると思います。そこから進んで、管理ができているかどうか?住んでいる場合、当然管理していますが、住んでいない時に、管理している場合と管理されてない場合に分かれると考えられます。それから、登記しているか、してないかですね。住んでいなくて、管理されていないけれども、登記されているという場合もありますし、全く住んでいない、管理されていない、登記されていないっていうのもあると思うんです。行政が色々と定義しているのは、おそらくこの「住んでいない、管理されていない、登記されていない」という場合が一番問題視されていると思います。来年度の4月から、登記をしないと罰則がかかってくるという制度・法律に変わるんですが、そこで国からは、しっかり登記をして、管理をしていってくださいねということが求められるのかなと思います。

小西
小西

この中で登記のところが異質ですので、仁井代表から登記について簡単に説明をお願いします。

仁井代表
仁井代表

登記簿謄本に相続人として名前が載るかどうかというところになります。相続登記をすると、所有者として認められます。

小西
小西

ありがとうございます。続いて不動産としての価値に関してですが、分けてみるとこんな感じになっていて、当然「ア」と「イ」は空き家ではないでしょう。空き家においても「ウ」と「エ」の2種類あるのかなと考えています。

仁井代表
仁井代表

一番問題なのは「エ」の部分ですね。利用価値が何らか残っていれば、仮に空き家になっても、将来現金化等の流動化が図れる可能性があるわけで「エ」の所になってしまうと、価値がなくなってきます。固定資産税の話で、上物が乗っていない更地にしてしまうとすごく高くなってしまうという話がありますので、どうしてもそのままにしておく。それが犯罪、火災、地域の景観を損ねるといった問題につながってきます。

大澤教授
大澤教授

空き家というのは膨大なんですよ。これを全部メンテナンスするのは無理なので、ちゃんと管理できるものは管理していかなければなりません。あと、自覚するということは非常に大事かと思います。一般的には行政が空き家のメンテナンスをすると言われてますが、行政は「ウ」と「エ」の区別があんまりができない。やはりマーケットの力というか、センスっていうんですかね。匂いを嗅ぎ取る力ってのは、やっぱり民間にあると思います。民間に「ウ」の部分を頑張っていただいて「エ」の部分は行政なり制度で変えていくのが大きな流れなのかなと思っております。

藤巻会長
藤巻会長

「ウ」の所に関しては、やはりマーケットというか一般事業者の方がどういう利用価値を提供するのかということを考えやすいと思いますがそこを相続人の方に提供して「ア」に持っていくというようなことが大事かな思いますね。あと「エ」の所ですね。利用価値・流通価値がなしなんですが、ここの利用価値を今あるもの以外の価値でどう見出せるかというふうに思うんですね。ひとつ、売却するということがあろうかと思うんですが、売却して買った所はおそらくリニューアルして貸すとか、転売するとかだと思いますが、そこの利用価値は住居だけなのか、それともカフェとか民泊などの価値なのかそれとももっと違う価値提供ができるのかっていうのは、やはり一般事業者の方で、行政を絡めながら何かサービス開発をしていく必要があるんじゃないかなと考えています。ですからこの「エ」をしっかり「ウ」に上げて、「ア」に持っていくというような流れを作っていくことが課題解決になると思います。

小西
小西

「エ」から「ウ」に上がって「ア」に変えていくってことになると思うのですが、価値としてはあるのに「ウ」に留まっている状況は、どのようなものが考えられますか?

藤巻会長
藤巻会長

相続人の方がその利用価値に気づいていないというところもあると思います。一般事業者の方が安く買ってしまうなども不利益な部分では起こりかねるかと思うのですが、情報をもう少し提供していかないとダメなんじゃないかなと思いますし、そこは我々とか士業の方たちの役割なのではないかと思います。

小西
小西

利用価値があるのにそれが使われていないというところに関して、制度上の良くない点など教えていただけますでしょうか。

仁井代表
仁井代表

相続に限って言いますと、私たち士業は、親が亡くなられてすぐの息子さんや娘さんにお会いする機会が多いんですがそういった方に対していきなり「ウ」から「ア」にしていく提案とかは危険かなと思います。唐突に受け取られたりしますので。ただ相続登記っていうのを入れるとこの「ウ」から「ア」に入れるためにいろんな不動産業者さんからアプローチをかけてくる流れになっています。なので私たちとしては、士業というところで、不動産業者さんとは違って、お客様に安心してもらえるようなご提案ができるんじゃないかなと思います。

大澤教授
大澤教授

利用価値という所は、持ち主が持っている価値と他から見る価値が違って、それは情報の非対称性になっていまして、多くのマッチングというか、そういう機会を作っていくという努力が必要かなと思います。綺麗な物件ってあんまり多くないと思いますが、色んな訳アリ物件をどうやって訳ナシにしていくのかということが必要だと思います。

NEXT:PART2『相続手続きの誤解』

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※記事は執筆時点の法令等に基づくため、法令の改正等があった場合、最新情報を反映していない場合がございます。法的手続等を行う際は、各専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。