祖母に遺影撮影をプレゼントした話
祖母に遺影をプレゼントしたのは、祖父が他界した次の年からのこと。
日常のほとんどを祖父の世話に費やしていた祖母。膝を痛め、歩くのもおぼつかず自分で動き回ることも減っていくだろうと思われた。
けれど、もともと闊達で気の若いところのある祖母のことも知っていたので、祖父が他界した翌年の彼女の誕生日に歩きやすい靴と、ヘアメイク付きの遺影写真の撮影をプレゼントした。
いつ亡くなってもいいように、というような後ろ向きな気持ちからではなく。
「おばあちゃんは、おばあちゃんの人生を心ゆくまで歩んでください」という気持ちを込めて。
綺麗にヘアメイクされた自分を見て、「うちはこんな美人になってしもうた」と大はしゃぎでそのままお食事。写真があまりに綺麗だったそうで、「こんなに綺麗だと近所の人に笑われるかもしれないから、手帳に挟むだけにする」と宝物のように持ってくれている。

人はいつか死んでしまう。目を背けてたとしても誰しも同じこと。死を見つめるということは、今をきちんと生きること。生きている間に祖母の遺影写真を撮ることで、おばあちゃんの今までの人生とこれからの人生について話を聞くことができた。
あれから、祖母は膝を人工関節にする手術をし、リハビリを頑張り、ひ孫に会うため東京に行くだけの気力も取り戻した。
いつか終える自分の人生を思うことは、実は命を豊かに彩ることに違いないのだと信じて、私はあれから長生きしている祖母にまた遺影撮影を送ろうと思う。

みんなの 終活窓口

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