遺言書を作成する前に
遺言を残すという作業は、人生の中で何回も経験することではありません。これから遺言について考えようというみなさまに、参考にしてもらえればという内容をいくつかご紹介します。
エンディングノートでいいですか?
遺言書とエンディングノートとの重要な違いは、法的効力の有無にあります。遺言書には法的効力がありますが、エンディングノートには法的効力がありません。エンディングノートは、「財産内容の整理」や「亡くなったら誰に知らせて欲しいか」「どんなお葬式にしたいか」など、終活の一部として、自分や家族などへの整理やメッセージに大変効果的な方法です。しかし、法的効力が無いため、遺産整理手続きの際に相続人全員での協議が必要となってしまいます。
せっかくノートに記したとしても、協議がまとまらなければ手続きを進めることはできません。遺産分けについてご自身の意思をお持ちなら、エンディングノートではなく、遺言を残しましょう。
法定相続分で遺産分割するなら遺言は要らない?
民法においては、遺言が無い場合、相続人全員で話し合って分け方を自由に決めることができるとされています。例えば、相続人のひとりが全部相続することも可能です。その話し合いの目安になるよう、民法では基準として法定相続分を定めています。ですから、遺言が無いからと言って、当然に法定相続分になる訳ではないとご理解ください。
相続人の中には、生前すでに遺産の前払いをしてもらっている人、また、故人の介護をひとりで抱えていた人がいるかもしれません。様々な状況から、相続人全員が法定相続分で分けることに合意するとは限らないのです。
その解決策として、遺言の活用が考えられます。法定相続分で分けてもらいたい場合でも、遺言でしっかりと「法定相続分で分けなさい」と意思を残しておけば、争いを避ける予防になるでしょう。
遺言執行者は必要ですか?
遺言書には財産の分け方を書く以外に、「遺言執行者の指定」をすることができます。遺言執行者とは、遺言の内容を実現する役割があります。
民法では、「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(1012条)」と明文化されています。この執行者が指定されることで、相続人全員の署名・捺印や印鑑証明書などの提出なく、執行者が単独で手続きを行うことが可能となります。言い換えると、相続手続きに非協力的な相続人がいても、執行者がスムーズに手続きできるということです。
注意点としては、執行者は客観的かつ公正に相続手続きを実現することが求められるため、財産を多く受け取った相続人や受遺者がその役目に適しているかという懸念があります。利害関係のない専門家を選ぶことも選択肢の一つとして検討されたらよいでしょう。
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