僕の死に方 エンディングダイアリー500日|終活コーディネーターが選ぶ「終活本」

なぜ私はこの本をこのタイミングで手に取ってしまったのか。本が届いたのは奇しくも著者金子哲雄さんがお亡くなりになった10月2日でした。

2012年10月、41才という若さで急逝した流通ジャーナリスト、金子哲雄さん。今ではメジャーになった「終活」という言葉を広く世の中に伝えた方としても知られており、以前「終活とは?」のコラムでも書かせて頂いたことがあります。ただ、私は彼の最後の著書をこれまで読んだことはありませんでした。

終活ってなに?何から始めればいいの?
「終活」とは? みなさんは「終活」という言葉を聞いたことがありますか?最近よく耳にするようになりました。でも終活って何なのでしょうか?まず、言葉の定義について考えてみたいと思います。 終活とは、2010年「ユーキャン新語・流行語大賞...

この本は、金子さんが亡くなる一月前に、最後の力を振り絞って書き上げた一冊だそうです。小さい頃からスーパーのチラシを見比べ、実際にお店に行き、お買い得品を探す日々を送っていた金子さんが流通ジャーナリストになり、どのように考え、どのように発信してきたか、仕事に対する想いなどが綴られていました。

スーパーの牛肉の値段からその地域の経済力を分析し不動産の相場を割り出す考え方など、マーケティングの考え方も分かりやすく書いてあり、ユーモアあふれる記述もあります。病気の宣告を受け、治療してくれる病院を探した日々や日本の医療の現状、在宅終末医療を選んだ理由や奥様や尊敬するまわりの方々に対する想いなども綴られていました。

知人はこの本を泣きながら読んだと言っていました。私はある意味晴れやかな気持ちで読み進めました。金子さんの死と向き合う覚悟を感じたからかも知れません。

やり残したことはわかっていた。死んだあとのことだ。まがりなりにも「流通ジャーナリスト」として情報を発信してきた。自分の最期、葬儀も情報として発信したいと思った。賢い選択、賢い消費をすることが、人生を豊かにする。自分が何度も口にしてきた台詞だ。葬儀は、人生の幕引きだ。これも含めて、人生なのだ。その最後の選択を間違えたくなかった。私は自分の「最期」を、最後の仕事として、プロデュースしようとしていた。

僕の死に方 エンディングダイアリー500日 第4章最後の仕事は死の準備 より

公正証書遺言を作成し、危篤状態に陥った8月22日の翌日、葬儀社の社長に自宅に招いて、金子さんは自分の葬儀をプロデュースする意志を伝えています。その時、葬儀社の社長も金子さんのお考えに驚かれていたことが書かれていました。今では自分の葬儀をあらかじめ考え、準備していく考えもある程度浸透していると思いますが、この時には斬新な考えだったのだと思います。自分で葬儀をする場所を決め、仕出しの料理を決め、納骨堂の場所を決め、告別式の会葬礼状の文面を書いたことなどが綴られており、「こうしたプロデュース作業は楽しかった」と書かれてありました。

「最期まで社会と関わっていたい」と死の直前まで仕事をすることを希望し、最期の別れをしている途中に来た雑誌の記事校正メールに赤入れする姿(お亡くなりになる数時間前です)には、生きることの意味を考えさせられました。

コラムのサムネイルには、東京タワーの写真を入れさせて頂きました。金子さんが生前に書かれた会葬礼状には、次の拠点は東京タワーの足元である心光院さまと書かれてあります。納骨堂を探されている時に東京タワーの足元を選んだ理由にも触れてありました。

本を読み終わり、私なりに感じたことを書いてみましたが、私の文章では金子さんの死生観等はとてもお伝えできそうにありません。ぜひこの本を手に取り、終活について考えて頂ければと思い、紹介に代えさせていただきます。

The following two tabs change content below.

みんなの 終活窓口

【生前から備える「みんなの終活窓口Ⓡ」】 終活の情報発信基地。生前の様々なニーズにお応えするために「みんなの終活窓口Ⓡ」を展開しています。 人生の完成期に向かわれるみなさまの遺言書作成や相続税対策、認知症対策、家族信託サポート、身元保証​、老人ホーム、葬儀​、お墓、遺品整理、住宅購入や保険の見直しなども行っています。

※記事は執筆時点の法令等に基づくため、法令の改正等があった場合、最新情報を反映していない場合がございます。法的手続等を行う際は、各専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。